理事長メッセージ

理事長 伊藤美奈子

理事長 伊藤美奈子

創立142年を迎えます

横浜英和学院は、1880年山手48番地にアメリカ人の女性宣教師ブリテン先生によって創立され、今年は創立142年になります。1916年に現在地、蒔田に移転してきました。長い間、中学高等学校は女子校でしたが、青山学院大学と系属校関係を結んで4年目の2018年に男女共学となりました。

スチューデントセンター「オリーブ」・アフタースクール「山手120番記念館」の完成

創立140周年記念事業最後の取り組みとして、中学高等学校クラブ活動のための部室棟、1学年収容可能な集会室、トレーニングルーム、生徒会室等が今年1月に旧ハインツ庭園跡地に完成しました。そのほか、小学校のアフタースクールに集う児童たちのために、創立3年目にブリテン先生が購入した山手120番館(作家有島武郎も学んだ場所)の洋館を彷彿とさせる群青色の瀟洒な洋館「山手120番記念館」も同時に建設されました。

集会室はオリーブホールと命名され、ハインツ庭園で伐採された樹木とほぼ同数の和歌山産の樹木が天井一帯に見事に張り巡らされています。そのホールは旧約聖書のノアの箱舟を連想させるような他のどこにも見られない独創的な建物です。ホールの前方の広々とした窓からは、みなとみらいが遠くに広がり、横浜らしい雰囲気を醸し出しています。今回誕生したこのエリアはスチューデントセンター「オリーブ」と名付けられ、樹齢推定200年余りのオリーブの古木がSymbol Tree として植えられています。またセンター 入り口近くに植えられた薔薇や校歌にうたわれている白と紫のあやめも、登校してくる生徒たちを明るく迎えてくれると期待しております。

正門を入ると右に礼拝堂、左に「山手120番記念館」と「オリーブ」が目に入り、キャンパス全体がより広く感じられ一層魅力的になりました。このような恵まれた教育環境の 中、生徒たちが毎日の学習活動やクラブ活動に一層力を入れて充実した学校生活を送ることができるのも、学院を日ごろからいろいろな形で支援してくださる方々のおかげであると改めて御礼を申し上げます。

今年度の建築計画は?学院歴史展示室ができます

今年度の建築計画は本館3階に歴史展示室を開設することです。1996年に第3校舎2階にあった歴史展示室は生徒たちだけでなく、外来者にも本校の歴史を知っていただく絶好の場所でした。しかしながら、中高が共学になるにあたり、新たな種々の施設の必要性から数年前に閉鎖に追い込まれました。

この度、学院の元社会科教諭で、校長、学院長、理事長を歴任された故永井輝男先生の遺贈のお陰で、新たな場所に新たな展示室を設置することが可能となりました。年内の完成を目指しております。学院の歴史を通して先達がわたしたちに伝えようとしたことを確認し、それが将来に亘って受け継がれることを願って開室の準備を進めております。

コロナ禍における本校の教育

一昨年から始まったコロナ禍はいまだ収束が見えてきません。そのために通常の教育が行われず試練の時となりました。しかし人生で起こるすべてのことには何らかの意味が必ずあると言われている通り、私たちはコロナ禍からもたくさんの事に気づかされ教えられました。

パンデミックという深刻な危機を私たちは体験しました。想定外のことが起きても慌てず、適応力や挑戦する力を持つことの大切さ。平凡な日常がいかに恵まれているかの再認識と感謝。その他学び方、働き方、人とのかかわり方、コミュニケーションの在り方など多くのことを考え、実行する機会となりました。今ほど私たち一人ひとりが他者のために生きる姿勢が問われている時はないことを認識しました。グローバルに関係しあう世界が共生するためには、相互理解、相互支援が必須であることも学びました。

本校では数年前から学院全体のICT環境の整備に力を入れていました。光ケーブルによる校舎間のネットワーク接続、すべての教室の無線Wi‐Fiの整備、中高では生徒一人ひとりのノートパソコンの所持などが整っていました。そのおかげでリモート教育、オンライン教育も時を経ずして、スムーズに移行でき、授業だけでなくオンラインを使って毎朝のホームルームや礼拝も守ることもでき、生徒の心が学校から離れることはありませんでした。しかしながら残念なことに幼、小の多くの行事や、中高の修養会などの宿泊行事も学内での実施となりましたが、生徒たちはそこから多くの事を学び、自らのこれからの生き方を考える良い機会を持ちました。たとえコロナ禍が継続しても、充実した学校生活をおくれるように教職員、生徒たちが一体となって努力してまいります。

平和を愛する心を育てる教育

今年の2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻が突如として始まり、世界中の人々を震撼とさせました。本校では、従来も海外伝道の日献金、クリスマス献金、被災者支援募金などを年間通して行ってきました。今回もウクライナから隣国に避難した人々を支援する募金活動を学院全体で行い、東日本大地震の時の募金を超える多くの募金が集まり、3月に日本YMCAを通して、ウクライナYMCAから避難民のもとに届けて頂きました。

グローバル教育、平和教育は本校の教育の柱の一つで年間を通して学びの時を持ち、世界の平和のために祈り、自分にできることを積極的にする人間の育成にこれからもますます力を入れていきます。

神様から与えられたmissionを貫く人間に

全ての人は、神様から賜物(タレント)と、使命(ミッション)を与えられています。在学中にいろいろなことに挑戦して視野を広め、世界の人々と心を開いてcommunicationをとり、自らのタレントとミッションを探求する日々を積極的に送ることを願っております。そしてキリストの教えをバックボーンにしっかり据え、スクールモットー「心を清め、人に仕えよ」を心にとめて、世界で活躍できる人に成長することを願っています。そのために、学院は日々、学院全体の教育環境を整え、教職員が全力を挙げて一人ひとりをしっかりサポートできる教育態勢の構築に力を入れていきたいと考ええおります。

学院長メッセージ

学院長・小学校長 磯貝曉成

学院長・幼稚園長 磯貝曉成

創立142年、新型コロナウイルス感染拡大の中、各人はそれぞれにできる感染防止に努め、学院はハイブリッド教育を視野に入れながら対面教育を実施して今日に至っている。このような危機的な時代であるからこそ、各人がどのように生きるかが問われているのではないだろうか。また、ウクライナ問題に解決を見ないまま世界は苦悩し、平和への厳しい道を模索している。私たちに求められることは、現代社会に対応していく行動力を身につけること、現実の先をも見通して現在を考える深い洞察力、そして何よりも想定外の事象に出会ったときにその現実を静かに受け入れ、その先を信じて生き抜く精神力の育まれることである。

二年以上に及ぶコロナ禍の中で、一人の人が生きるためには、一人の者の努力だけでは済まないことに改めて多くの者が気づかされている。当たり前の生活と思っていたことが、実は様々な人たちの働きによって成り立っていたということに気づいた人たちが、この感染による重大な危機に、自分にできる範囲のことを一生懸命努めることが大切と感じ、動き出していることも事実であろう。わたしたちもまた、この危機的な現実を受け止めながら、学院の明日の姿を描き歩き出している。

子どもたちや生徒たちは、頑張っている。一人ひとりは自分のできる最大の努力をしている。それは自分のためのみならず周りの人たちのためであることを知っているからである。知らず知らずに、人が生活して行く上で何が大切かという重要な体験をまさにこの重大局面で行っている。私たちのスクールモットー『心を清め 人に仕えよ』を期せずして体現していると言えよう。感染の拡大はなお高止まりが続いているが、弱い者、忘れられている者の存在を思いつつ、地域や国を超え、感染阻止のために各人の出来ることに努力を続けていくことが私たちの使命のはずである。短距離走ではなく、遥か彼方のゴールの見えない長距離走を私たちは走り出している。未曽有のことかもしれないが、一人ひとりにできることを一人ひとりが行いつつ、互いを支え合う気持ちが希望に至ることを信じている。

以下に2022年度の学院事業報告を記す。

学校法人横浜英和学院 2022年度事業計画

学院スクールモットー「心を清め 人に仕えよ」
(聖書 マタイによる福音書5章8節・20章26b-27節)
青山学院横浜英和中学高等学校・青山学院横浜英和小学校・横浜英和幼稚園

ウクライナにおける戦争の惨禍が刻々報道される中、世界平和への取り組みがいかに現実において難しいことかを知らされている。このことを心に深く止めつつ、横浜英和学院の2022年度事業計画を示す。2022年4月、新型コロナウイルス感染がなお収束しない中、これまでと違った形での生活リズムで学校生活が動き出した。昨年、計画された事業の多くは延期せざるを得なかったが、新たな試みも生まれだした。それぞれの学校において人と人との交わりの中でのハイブリッド生活様式が実践されるようになってきている。2022年度の教育活動方針と事業計画は、昨年度実行できなかった事業を重点的に推進することから未来をめざすこととなる。

2022年度活動方針と事業計画

1.活動方針

(1)キリスト教学校教育による豊かな情操教育を推進する。
スクールモットーの具体化として、2022年度~2023年度の学院年間宗教主題に「あなたの未来には希望がある。(エレミヤ31:17)」が掲げられた。目の前の絶望的な状況だけですべてを判断することなく、祈りの中に希望をもって今を生きる生き方を心にとめたい。また、グローバル社会に生きる者として世界の人々の平和的共存や、SDGs精神への積極的な取り組み等を促す学院としてありたい。学校生活のみならず日常生活でもこの目標を活かしていくために保護者にも周知し、協力を仰いでいきたい。

人と社会のために心身を鍛え、確かな学力を育成するための具体化を進める。小学校・中学高等学校ではシラバスが作成されている。シラバスの改訂が各学校で毎年なされ、常に課題が論議されていくことを願う。青山学院横浜英和中学高等学校、小学校が動き出し、昨年度は系属校1期生として多くの生徒が青山学院大学への進学を果たした。学院としての一貫教育は、幼稚園から小学校、小学校から中学校への連続性をさらに高めることで一層の実現を促していく。小学校と中学高等学校との教科指導の連続性が、学院の教育ベクトルを強化させていく上で必須となる。幼稚園から小学校への内部進学考査、特に小学校から中学校への内部推薦基準についての問題点を校務会が中心となり検討していく。

2.事業計画

(1)生徒の自主活動を促す教育施設として、「スチューデントセンター」が4月より活用され、また小学生のアフタースクール「山手120番記念館」が幼小中高校の教育相談室としても多目的に活用されることを願う。

(2)幼稚園の健全な運営のために幼稚園の組織・構造改革の一歩が2022年度より動き出しつつある。その教育の充実のための一歩として小学校との連携(小学校体育教師の幼稚園での教育参加及び幼稚園教師の小学校への異動)を進める。

(3)コロナ禍により実行できなかった系属校としての青山学院大学との具体的連携事項(特に大学と小学校との連携)をあらためて開始する。

(4)学院の外郭団体との緊密な連携を図る。丘光会・丘桜会・後援会さらにPTA活動また父の会(行事への協力・登校指導等)の拡大など縦横な組織造りを行い、横浜英和ファミリーの活性化を進める。

(5)EIWAブリテンファンドを設立する。期限を限定せず、卒業生・在校生・卒業生の遺贈、その他学院教育への支援者が何時でも学院に寄付できる制度を2022年度に発足させる。①教育環境・教育施設の整備、②グローバル社会での活躍者の育成(奨学金等)

(6)ICT教育の更なる発展を期して3か年計画(2022年度~2024年度)を提言(学院長、事務長、情報室長等)し、実現させる。個々の学校の特性を考慮しつつ、オンライン教育・リモート教育等、これまで推進してきたICTの環境をハード面のみならず、ソフト面でも充実させるべく本年度よりICT支援員の増員を行う。同時にハイブリッド教育を深めていく。

(7)私学における働き方改革の展開
教職員の長時間勤務体制に疑問を投げかける働き方改革の問いかけに、さまざま議論を推し進めていく。このことと合わせて経営と教育との両面から横浜英和学院のあるべき姿の構築をめざす。一つに中学高等学校のクラブ活動等のあり方を検討する。教職員の定年制についても具体的な検討に入る。

(8)組織のシンプル化
学院内の様々な組織の重なりを排除し、時代に適う行事の精選を検討する。各校および学院における教職員の意思の疎通がよりよく行われる組織の実現を図るため意見を広く求める。

(9)キリスト教学校教育同盟およびキリスト教保育連盟さらにカトリック学校連合との連携を深め、その共通の目的をこれまで以上に推進する。このことはキリスト教学校に勤務する教職員一人ひとりに研鑽の機会を提供することにも繋がっていく。2022年度~2023年度の教研テーマは「希望と喜びに生きる―新たな転換期に立つキリスト教学校―」です。

(10)各校の事務室及び本部事務室のこれからのあるべき在り方を模索し、事務長のもとに、これからの時代に即応できる長期的な組織構造を考える。

(11)学院の歴史を編纂し、教育に生かしつつ、後世に伝えていくために学院の歴史研究施設としての「永井記念学院歴史展示室」の建築を夏期に開始する。