【12月 園長だより】
2022.12.01
喜びあふれて
年少組のクラスに入るとたちまち子どもたちから、「園長先生、見て、見て」という声が飛んできます。子どもたちの所に行ってみると、子どもたちが気づいた驚きや不思議に出会えます。それは大人たちが当たり前と思って見過ごしていたものへの新たな発見に気づかされるのです。
ある放課後の預かり保育でのこと、園庭で一人の子どもがホースの水を漏斗を通して地面に落としていました。漏斗から真っすぐ落ちた水によって、地面に穴が徐々に掘られていきました。水が地面を穿っている所を見ていた子どもが、「見て、見て、煙がている」と、訴えたのです。水から煙が出るはずなどないのですが、もう一度初めから同じことを、その男の子が行ってくれました。すると穿たれた穴に満ちたきれいな水の中に、煙のようなものが現れたのです。まさか煙が。それは少し赤土の混じった砂が周りからさっと水の中を流れ落ちたのでした。その一瞬、薄い茶色の煙に見えたのです。言葉では言い表せない「現象」の瞬間でした。顔を見合わせて、二人だけが見た水の煙に満足したのでした。「ふむ、ふむ、確かに、煙だった。」見ても見ず、聞いても聞かずの日常生活の、新たな捉え直しをさせてくれる子どもたちでした。
ワーズワースの詩「虹」に、子どもは大人の父とあります。
「私の心はおどる 虹が空にかかるを見るとき
私の生涯のはじめがそうであった 大人になった今もそうだ
老いてもそうであるように さもなくば死んだがまし
子供は大人の父だ 私のおくる一日一日が自然に対する深い敬意の心で結ばれるように。」
子どもたちとの出会いには、いつも「喜びあふれて」が起こるのでした。
幼稚園園長・小学校校長・学院長 磯貝 曉成